バカップルな二人のお題
≪おまけ≫
カーテンの隙間から差し込む日差しの眩しさに、朝来は目を覚ました。
横向きに寝ていた朝来の頭の下には暖かい枕がある。
(あったかい……)
寝ぼけ眼のまま暖を取るように頬を枕に擦り付けた。
ぽかぽかした日向で眠る猫のように、それは気持ち良さそうに再び眠りにつこうとした朝来は、枕だと思っていたものに突然身体を抱きかかえられて我に返った。
(ど、どうしてこいつがいるのよーーー!)
一瞬で眠気も吹き飛んだ朝来は、狼狽しながらも昨夜のことを思い出そうと努力する。
(……えーと…、確か泊まることになってお風呂に入って、それからお酒を飲まされて……)
冷静になってその状況を脳裏に描くと、朝来は恥ずかしさのあまり叫びだしたくなった。
(わ、私ったら! シャツ一枚であいつに密着して、しかももしかしてそのまま寝ちゃったの!?)
咄嗟に自分の現在の姿を確認するが、一応昨夜と変わりない。
なんだかほっとしたような、すこし残念なような気分だった。
気を取り直して宗像を見上げる。
上半身は相変わらず裸のまま(宗像曰く「女と二人きりになったら服を脱ぐのは常識」)、朝来を抱いて寝息を立てている。
一人で恥ずかしがっているのもばからしく思えて、朝来は全身の力を抜いた。
が、まるでそれを見計らったかのように、宗像が朝来の腰をさらに引き寄せた。
「えっ?」
朝来が状況を飲み込むよりも早く。
寝起きの男は素早く朝来の唇を奪った。「おはようのキス」である。
「っん〜〜〜〜〜〜!!」
が、朝のキスにしては深すぎるそれは、朝来の呼吸をいとも簡単に阻害する。
やっと解放されたときには、肩で息をする始末だった。
朝来は呼吸を整えながら、宗像をきっと睨みつけて文句を言う。
「苦しいじゃないの!」
しかし、言われた宗像はなぜそんなことを言われるのかわからないといった表情で、真剣に反論したのである。
「なにを怒ってるんだ。お前の希望通りだろう?」
「は? 何言ってるのよ!」
「やっぱり覚えていないのか」
残念がっているのか、面白がっているのかよくわからない声音だった。
そう、朝来は覚えていない。
昨夜宗像の胸の中で、キスをねだって「もっと」と囁いたことを。
宗像はニヤニヤと笑ったまま、朝来に教えてやることはなかった。
――覚えてないなら次は記憶の残る状態で言わせてやる。
そう考えているのは明白だった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
▼目次へ