ひとつ屋根の下に贈る5つのお題


5. さりげなく、告白(完)



 ――最初の接触《キス》で脊髄を駆け抜けた電流は、頭の奥に甘い痺れを残して四散
   した。
   全身に広がる熱に浮かされる――。


(っ……うひゃぁぁー!!)
突然身体の向きを変えられ視界を塞がれた瞬間、身体が弓形に反った。
視覚を封じられたことで、かえって感覚が敏感になっている。
あまりの衝撃に俺が声にならない叫びを発している間も竜二は腕をほどこうとしない。
たしか、前にも牙流会のボスこと権座衛門に同じようなことをされた記憶がある。
あの時も瞳孔が全開になるくらいびっくりしたが……今回はその比ではない。
というか、竜二のコレは……この身体の奥が火照るような感覚は一体何だ!??
俺は、俺の身体は一体どうしちまったんだ??

あまりに動揺しすぎて、
「りゅ、りゅうじ……ちょ……」
と、ためらうような台詞が口から洩れる。
決してその言葉は嘘ではない。
なのに――。
竜二が唇を離してくれないならそれでもいいか、とも思っている俺がいる。

『だって朝、人肌恋しくて目が覚めたくらいなんだろ』

浅羽君の言葉が頭の中で響いた。
……そうだ。
眩暈にも似たこの衝撃に驚きながら、俺は今、やっと竜二に触れられたことに安堵している。
いつの間にか竜二のぬくもりを直に感じることに疑問を挟むどころか、自分から求めていたんだ。
目が覚めるといつも広い胸板が視界を覆っていることも、毎朝挨拶するたびに触れられ抱きしめられることも、実は決して嫌じゃない。
まあ、セクハラされると反射的にぼこぼこにしてしまうが……。
――とにかく。
今朝から胸の内を占めていたもやもやの原因は、やっぱり浅羽君が言ったとおりだった。
悔しいけど、こういう気持ちはどうにもならないもんだと今では俺も知っている。
自分の理性が豆腐よりモロいことも、以前朝来と竜二が婚約したときに実証済みだ。


「…………司?」
突然、竜二の声で我に返った。
どうやら、ずいぶん長いこと動かなかったらしい。
こちらを窺うような竜二の様子が妙に笑える。
普段はふざけてよく俺を組み敷く竜二だが、本当は俺の意思を何より尊重してくれていることも俺はちゃんと知っている。
今だって、俺が許容量《キャパ》を超えないようにこれ以上は迫ってこないんだ。
そんなことを考えていたら、肉食獣のような竜二もなんだかかわいらしく思えてくるから不思議なもんだ。
「……何をへらへら笑ってる」
俺の顔を見た竜二が渋面を作った。
おっと、思わず顔がにやけてしまったようだ。
頬の緩みを引き締め……ようとして失敗し、そのままの面でとんっと竜二の肩に後頭部を預けた。
身体ごともたれかかっているので、自然、上を見上げる格好で竜二に話しかける。
「ん。なんかお前、かわいいな」
にっこり笑いかけた俺とは対照的に、竜二は雷に打たれたように固まった。
なにやら妙な衝撃を受けたらしい。
そんな竜二も珍しいので、俺の頬はますます緩んだ。

だから、と言っちゃなんだが、なんだか今日はいつも以上に竜二のことをかまってやりたくなった、んだと思う……。
後から思えば俺のほうこそ叫びだしたくなったのだが。
俺は普段なら絶対に言わない台詞を、今夜の夕飯でも話題にするような気軽さでペロっと口にし、せっかくナリを潜めていた猛獣竜二を再び呼び戻すという愚を犯してしまった。
しかもそれが嘘偽りのない本心ときてるから厄介だ。


――その瞬間、竜二の眼の奥がキラリと光ったのを俺は確かにこの眼で見た。








「竜二」
「なんだ」
「今日は一緒に寝てやるよ」








――…ニヤリ






ありがとうございました。楽しんでもらえたでしょうか…?
予定通り一日一話のペースで終わらせることができました。
司坊とりうぢって、どっちも猛獣なんですけど、なんとなく種類が違うと思うんですよね(笑)
司坊は文字通り怪物級の戦闘能力を携えた獣で、りうぢは色気が武器の獣です……
そんなりうぢに、今回はいい思いをさせてやれたかな?

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