恋する動詞111題

58.絡める


注)拍手御礼企画『殺生坊主とネコ娘』より。


さわさわ

ふわり

さわさわ

しゅるり


とある宿の一室。
畳に腰を下ろして珍しく書物に目を通していた宗像は、少し前から完全に傍らの存在に気を取られていた。
左手に持った書物の存在など今はまったく目に入っていない。

普段は人型が多い朝来が、今は白銀の妖の姿で宗像のすぐ隣に寝そべっている。
宗像に背を向ける形でうつ伏せになり、窓から降り注ぐ日差しの中、その極上の毛並みをきらきらと輝かせながらそれは気持ちよさげにうたた寝中である。

その、しっぽが。

不規則に、しかし何とも言えない力加減で宗像の足元をくすぐっているのである。

真っ白で、非常に手触りの良い、ふさふさのもふもふが。
宗像の足首をしゅるりとからめ捕ったかと思えば、ぺちぺちと叩くように纏わりつき。
柔らかく撫でてきたかと思えばぴたりと肌に沿わせたり。

何とも魅惑的なそれに、宗像の視線は捕えられたきり。

だがどんな動物も尾を掴まれるのは嫌がるものである。

(この衝動をどうしてくれようか)

なんて物騒なことを考えながらも、その眼の光は意外にも優しいもので。
それでも知らずにゴクリと喉を鳴らしながら、白いもふもふを手中に収めたい欲望を何とか抑える破戒僧が一人。


麗らかな午後のひとときであった。


朝来(妖バージョン)のもふもふにヤられる宗像氏(笑)←

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