攻め気味な20のお題
ああ、ダメ。
何も考えられなくなってしまう――。
9. 本当はどうしようもなく欲してる
両手を頭上で壁に縫い付けられたまま、朝来は宗像にされるがままになっていた。
「ふ……ぁ…」
一瞬、宗像の唇が離れて久方ぶりに空気が喉を通る。
(ほんと、キス上手いんだから……)
やっと一息吸えたことで、頭の別の部分が妙に冷静な感想を抱く。
が、そんな呑気な空気は即座に霧散した。
――否、させられた。
至近距離で見る宗像の瞳に、危険な色が灯る。
朝来は咄嗟に目を瞑った。
キスが降る――そぼ降る夜の雨のように。
再び唇に。
頬を伝って首筋に。
鎖骨に。
胸元に。
下方へと移るにつれて、だんだんと強く吸い付かれているように感じるのは気のせいだろうか。
でもその一つひとつが妙に優しくて、いつも以上にドキドキしてしまう。
(な、なんか、変……!! あたし、どうかしてるわ)
いつもなら恥ずかしすぎてこれ以上は耐えられないのに、今はこの男をもっと感じていたいと思ってるなんて。
自分の身体と心の変化に、朝来は戸惑う。
ふと、視線を感じて朝来は目を開けた。
「――っ!」
息が止まるかと思った。
否、確かに一瞬止まったのだ。
(……嵬?)
なんて眼で見つめるのだろう。
揺らがない強い瞳はいつもと同じ。
なのにその奥に……そう、ほんの僅かにだけれど確かに。
何かに耐えるような、葛藤するような、今まで見たこともない宗像の一面が過ぎった気がして。
同時に、腕の拘束も緩んだ。
朝来は思わず宗像の頬を両手で静かに挟んだ。
その無意識の行動に、宗像が微かに笑う。
そして宗像は朝来の小さな両手を包み込んで、ゆっくりと頬から離した。
宗像は顔を軽く右に向けた。
自分の手の中にある朝来の右手の平に口付けを。
それでも決して視線は逸らさない。
そう、一瞬たりとも。
目線だけで朝来を捉えたまま、宗像は朝来の指を唇で弄び始めた。
伏し目がちな流し目が、見つめる相手の気持ちを妙に高揚させる。
まるで招かれるように、朝来は自分から宗像へ顔を近づけていった。
すみません……あんまり進展しなかった……
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