攻め気味な20のお題
参った――。
宗像は滅多に揚げない白旗を揚げそうになった。
10. 結構、限界。
柔らかく、滑らかで張りのある肌。
そこへ鬱血の痕を散らすことは決して初めてではない。
それでも、唇から伝わる朝来の感触は、宗像の劣情を否が応でも高めていく。
瑞々しい果実のような唇を十分に堪能し、そのまま首筋を伝う。
綺麗なラインを描く鎖骨へも口付けを落とし、そのまま胸元へと移動した。
控えめな胸のことを朝来本人はコンプレックスに思っているようだが、柔らかな感触は言うまでもなく、少し触れただけで悩ましい吐息を吐くほどに感度のいいそれは 宗像の欲情を刺激するには十分過ぎる。
しかもどうやら今夜はいつも以上に感じているらしい。
普段なら顔を真っ赤にして(無駄だと知りながら)抵抗を試みる朝来が、今は目を閉じたままその身を宗像にゆだねている。
頬を上気させ、時折小さな喘ぎ声を洩らしながら宗像の愛撫に懸命に耐えている朝来の様子を目の当たりにして、我慢するなという方が無理というものだ。
この細い身体を有無を言わさず抱きつくしたい衝動に駆られる。
それでもこの時点では、まだわずかに残る理性がそうすることを躊躇わせた。
(あー、くそっ。本格的にヤバイな……)
鉄壁の理性(本人の評価)がだんだん崩れ去っていくのを感じながら、宗像は朝来の顔を見つめた。
本能と理性の板ばさみで、自分でも嫌になるくらい情けない顔になっているのが分かる。
だが、どうすることもできずに、宗像はただ朝来を見つめた。
ふと、朝来が目を開けた。
視線が交錯する。
朝来が息を呑むのが分かった。
そして宗像が思わず腕を掴む力を緩めると同時に、朝来はその両手で宗像の頬を包み込んだ。
+ + + + +
朝来が不意に自分から顔を近づけてきたのは、宗像が朝来の手の平の感触を唇で堪能しているときだった。
宗像は内心意外に思うが、表情には出さずにただ見つめ続けた。
どこか熱に浮かされたような顔のまま、朝来は宗像の唇を親指でなぞる。
そして息がかかるくらいの至近距離で宗像の上唇を一度甘噛みした。
宗像はますます意外な気持ちを強くするが、状況を楽しむことだけは忘れない。
「違うだろう? もっとちゃんとしてくれよ」
わざと挑発するように言ってやる。
普段ならその物言いだけで突き刺すような無言の抗議の視線を受けるはずだが、今朝来はある意味正気ではない。
ぴくりとわずかに眉を動かすと、朝来はゆっくりと深く宗像へと口付けた。
さすがの宗像も、この辺が限界だった。
宗像は朝来のワンピースが皺になることなどまったく気にしない、というよりそんな些細なことは端から頭にない様子で、朝来の細い身体を抱き上げた。
「えっ」
突然足場を失くした朝来が声を上げたときは、すでに宗像は寝室へ向かって歩き始めていた。
少々手荒に朝来をベッドに降ろす。
宗像は片膝をベッドに乗り上げ、朝来の顎を掴んでキスをした。
「ふっ……ん…」
朝来の方は決して上手くはないが懸命に応えようとしている。
そんないじらしい様子がまた宗像の理性を崩していく。
必至でキスを受け止めていた朝来は、いつのまにか宗像の手が自分の背中にまわり、そのまま流れるような動きでワンピースが脱がされようとしていることに気がついた。
意識しなければ思わず流してしまいそうなほどに見事な手際だ。
が、さすがに脱がされると意識した瞬間、朝来は驚いて身を離した。
「ちょ、ちょっと待って……」
今さらだとは思うが、心の準備をさせて欲しい。
それは実に切実な願いだったので、まずは待って欲しい理由を言ってみる。
「ワンピース、せっかく着たばかりなのに……」
「別に、また着ればいいじゃねえか」
「って、あんたが着ろって言ったんじゃないの!」
「――ふっ」
「な、なによ……」
意味深な宗像の笑みは、朝来の不安を掻き立てる。
わかってやっている宗像はやはり人が悪い。
「お前、知らないのか?」
「何をよ」
むっつりと訊き返す朝来を楽しそうに見下ろす宗像は、朝来の耳元でまことにためになることを教えてくれた。
「男が女に服を贈るのは、それを脱がせるためだぞ」
自信満々に断言されても。
あまりに堂々と宣言されたものだから、うっかり反論する機会を逸してしまった朝来だった。
あぁもう、やっつけ仕事でスミマセン……。
おかげでぜーんぜん進まないですね、話。
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