攻め気味な20のお題





「わっ……ちょ、ちょっと待って」
「待たねえ」
「やっ!!」




11. 「聞き分けが悪い奴に必要なものは何だ?」





 キングサイズのベッドの上では朝来と宗像の激しい攻防が繰り広げられていた。
 が、軍配がどちらに上がっているかは今さら確認するまでもない。
 箍が外れかかっている宗像を止めることのできる人間がそうそういるわけがない。
 朝来はほとんど脱がされかけたワンピースを胸元で必至に手繰り寄せようとしていた。
「……お前なぁ」
 朝来に覆いかぶさった宗像が呆れたように言った。
「さっき自分からキスしてきたのは一体誰だ?」
「あれは……」
「あんな色っぽいマネされて、いくら俺でも我慢の限界ってもんがあるぞ」
「うぅ……」
 色々と思い当たるフシがあるだけに、朝来もいつものように反論しづらい。
 しかし、彼女にも色々と言い分があるのだ。
「だって、あんたが似合わない表情するから……」
「俺が?」
「あんな切なそうな眼で見つめられて、いくら私でも何も感じないわけないでしょ!!」
 ああ、なんかすごく恥ずかしいこと言ってる気がする。
 朝来は頬が熱くなるのを感じた。
 一方宗像は、自分はそれほど我慢できなさそうな顔をしてたのかとちょっぴり落ち込んだ。
 が、ここまできて「やっぱりなし」は有り得ない。
 恥ずかしさのためか、先ほどから顔を背けている朝来の手元をじっと見つめて呟いた。
「……さっきから、何隠そうとしてるんだ」
「う、うるさいわね! いいでしょ、別に」
「いや、よくないだろ。お前は見られても減るもんじゃないが、俺の楽しみは確実に減る」
 なんとも自分勝手な言い分に、さすがの朝来もあきれ果てる。
「ほら、手どけろ」
「……」
 それでも朝来は頑なだった。


(今さらとは思うけど。でもやっぱり……)
 一言で言えば、不安なのだ。
 はっきり言って、朝来の胸は小さい。
 たとえそんなことは気にしないと言われても、こちらは気にするのだ。
 見られて、がっかりされたらどうしよう。
 だが、そんな乙女な悩みを、宗像本人に言えるわけがない。


 そして微妙な攻防が続く。
 実は、宗像は朝来のそんな悩みなどとっくに見破っていた。
 当然だ。
 はっきり言って、この手のことに関してはこの男は百戦錬磨だ。
 わかりやすい朝来の考えを読むことなど容易い。
 しかし、だからこそ、朝来の身体を見てがっかりするかもしれないと思われていることが少々癪だった。
(ずいぶん見くびられてるもんだ)
 惚れた女の胸が少々小さいくらいで、男ががっかりしたりするはずがない。
 それどころか、今も目の前で恥らいながらも瑞々しい肌を惜しげもなく晒している朝来は十分魅力的だ。
 そりゃもうこっちの理性も色々ヤバイくらいに。
(でもまあ、そんなところも可愛いんだがな)
 そんなことを考えつつ、宗像は組み敷いた朝来にふっと微笑んで見せた。


 その笑顔に、朝来がぴくり反応した。
 むしろギクリと言い換えるべきか。
 なにやら含みのある笑みに、朝来の頬が僅かに引き攣る。
 そして宗像がゆっくりと口を開いた。


「聞き分けが悪い奴に必要なものは何だ?」


 宗像は朝来の返事を待たずに、その肩口に唇を押し付けた。
 吸い付いては離れることを繰り返しながら、だんだんと朝来の腕の力を抜いていく。
――聞き分けが悪い奴に必要なものは。
(お仕置きだろ)
 宗像は嬉々として朝来の肌の感触を堪能し始めた。





このままじゃ朝来さん、喰われちゃいますねぇ……

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