攻め気味な20のお題





 柔らかく張りのある唇。
 くすぐったそうに首をすくめながらも、首筋に顔を埋める宗像の頭を抱えるようにまわされる両腕。
 耳をくすぐる微かな吐息と喘ぎ声。
 それらは男の理性にヒビを入れるには十分すぎて。




15. 「甘い言葉が欲しいのか?」





「――ひゃっ! ちょ、そこはダメ。待ってってば」
「耳か。敏感だな。ほれ、ちょっと腕上げな」
「えっ、ちょ、きゃっ」
 そしてあっという間にTシャツを剥かれる。
 ここに司がいたら竜二と張り合うその見事な手腕に思わず唸ったことだろう。
 ――ともかく。
 キャミソール姿になった朝来を宗像はしばらく無言で見つめていた。
 朝来は至近距離で見つめられて思わずその身を自ら抱くようにして宗像から目を逸らす。


(な、なんで何も言わないのかしら……)
 見られるだけというのはなぜか妙に緊張するので、朝来としては宗像に何かしゃべって欲しいのだが目の前の男は一向に口を開こうとしない。
(やっぱり子どもっぽい体型に落胆したとか……?)
 無言の時間はなぜかとても長く感じて、朝来の思考はどんどん悪い方向に動き出す。
 それでも宗像の視線が横目からでもわかるほどしっかりこちらを捉えて離さないことがわかるから、ますます混乱してしまう。


 朝来の感覚では途方もない時間が経ったように感じたが、実際はそれほど長くはなかったかもしれない。
 不意に宗像の大きな手が朝来の頬を覆い、ゆっくりと顔を正面に向けさせた。
 目が合った瞬間、宗像の表情がふっと緩み、それまで不自然に閉ざされていた口が開く。
「珍しく大人しいな。抵抗しないのか?」
 その口調がからかうようだったのは、気のせいではないに違いない。
 朝来の緊張をほぐそうという意図があるのはわかったが、それはそれで癪でもある。
「〜〜仕方ないでしょ! こっちは緊張してるのよ! だいたいあんたこそ、なんでそんなに黙ってんのよ。そりゃ、私の体じゃちょっと物足りないかもしれないけど……」
 後半の言葉は尻すぼみになってほとんど聞き取れないくらいの小さい声だった。
 精一杯眉を吊り上げて非難するように言う朝来は、しかし怒っているというより拗ねているように見える。
 宗像としてはやっとゆっくりと堪能できる朝来の身体をじっくりと見ていただけなのだが、どうやら朝来には妙な間と感じさせてしまったらしい。
 しかもなぜか変な解釈までし始めている。


(物足りないどころか、ふるいつきたくて仕方がないんだが……)
 そんなことを内心で呟きながら宗像返事を返した。
「しかし、まぁ、こういうときはあまりしゃべらないもんだと思うぞ」
「う……そういうものかもしれないけど……ちょっとくらい……」
 なにか雰囲気のでることを言ってくれてもいいんじゃないか、とまでは口には出さなかった。
 が、百戦錬磨のこの男にとって朝来の気持ちを汲み取ることなど造作もない。
(なるほどそういうことか)
 口の端でにやりと笑った宗像は、朝来の耳元で低く囁いた。
「もしかして、甘い言葉が欲しいのか?」
 宗像の吐息がかかり、びくん、と朝来の体が跳ねる。
 どうやら本当に耳が弱いらしい。
 それに気をよくした宗像が、だんだんと朝来を言葉と動きで翻弄していく。


 長い長いキスが始まった。
「ふっ……はぁ……っ……」
 絶妙の間隔で息継ぎの間を朝来に与えながら、しかし徐々に深く口内に侵入する。
 拙くも精一杯応えようとする朝来の舌を、宗像のそれが強引に絡め取る。
 唾液が絡まる音と息も絶え絶えな朝来の吐息が宗像をさらに煽る。
 ふと、キスを止めた宗像が朝来の目を真っ直ぐ見つめながら言葉を紡いだ。
「この唇も」
 言いながら、宗像の指が朝来の唇をなぞる。
「この瞳も、この肌も」
 今度は触れるだけのキスをその場所に落としながら。
「この髪も、身体も、すべて」
 そしてもう一度深く口付けて。
「俺のものだ」
 その言葉に、頬を染めて驚く朝来に微笑を向けて。
 宗像は目の前の少女が欲しい言葉を惜しみなく与えた。
「物足りないなんてとんでもない。正直、今でも俺の理性はかなりヤバイ。こんな綺麗な身体とそんな誘うような眼を向けられたら、いくら俺でも 歯止めがきかないぞ? ……いいか?」
 今さらながらに確認と了承を求めてくる宗像に、朝来がは少し笑ってこくりと頷いた。


 頷いた、と言っても、もうそれしかできなかったと言ってもいいかもしれない。
 確かに、言葉が欲しいとは思ってはいた。

 ――『甘い言葉が欲しいのか?』――

 あれはからかいの言葉だとばかり思っていたのに。
 激しいキスで意識をもっていかれそうになったところで、この不意打ちだ。
 言葉がキスより強い衝撃をもたらすとは想定外だった。
 先ほどから宗像の口からこぼれるのは信じられないくらいに甘い囁き。
 しかもこちらを見る表情がちょっと直視できないくら優しいのだから、もう本当に手に負えない。
 というか、正気でいられないかもしれない。
(やっぱり嵬はずるい!)
 私ばっかりいつも色々限界を感じるなんて。
 朝来は最後の理性を総動員させて、潤んだ瞳でキッと宗像を睨んだ。


 そんな表情も、宗像を煽ることを朝来はまだ知らない。
 限界を感じているのはこの男も同じこと。
(あまり手加減できないかもな……)
 朝来が聞いたら後ずさりしそうな独白をして、宗像は朝来の下着に手をかけた。





久々の更新……ですが、このまま進めるとどんどんアヤシイ方向へ進むんですが。
でも宗像だし。相手は可愛い朝来だし。

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